第9章 桜の樹の下で 加州清光②※R18
「……ん、うう……」
ひゅうがが目を開けると、こんのすけが窓際に座って外を見ていた。
「こんのすけ……」
「ひゅうが様!気がつかれましたか!」
ひゅうがは横になったまま、こんのすけを呼び、おいでと手をこまねいた。
こんのすけはひゅうがのすぐ隣に座ると、ひゅうがが一期一振らを顕現後に倒れたこと、加州が突如遠征から戻ったことなどを伝えた。
「さっきの、本当は夢だったのかもって思ったけど、違うんだね。それで、清……加州は?」
「加州殿でしたら、広間に行かれました」
ひゅうがはこんのすけの頭を撫でると、こんのすけはされるがまま気持ちよさそうに目を細めた。
「……こんのすけ聞いて。私、みんなに力のこと話そうと思う」
「…………」
ひゅうがはゆっくりと身体を起こす。
布団から出て立ち上がると、足元にいるこんのすけを見た。
反対なのか、こんのすけは俯き、無言になっていた。
「こんのすけ?」
戸惑いながら声をかけるひゅうがに、こんのすけは顔を上げにっこりと笑う。
「ひゅうが様、それがいいと思います」
なんとなく、瞳が潤んでるような気がしたが、ひゅうがは満足気な表情を見せたこんのすけに安堵した。
「けど……みんなに話す前に、やることがあるの」
「……加州殿ですか?」
ひゅうがはこんのすけの前で寝間着を脱ぐと、小袖袴に着替える。
「よくわかったね、こんのすけ」
「ずっとひゅうが様を見てきましたから」
袴の帯を締めると、ひゅうがは窓を勢いよく開ける。
桜の木が視界に入り、ひゅうがは思いを馳せた。
「あそこで待ってみる……来てくれるかな」
「こちらに加州殿が来るのを待つわけにはいかないのですか?」
「んー、最後にもう一度、本当に呼んだら来てくれるか試してみたいっていう複雑な乙女心があるの」
ひゅうがはこんのすけの方を振り向いて苦笑いをすると、ひゅうがは部屋から出て行った。
彼女が階段を降りる足音がトントンと聞こえる。
「ひゅうが様、きっと加州殿は来ますよ」
遠ざかるひゅうがの足音を聞きながら、こんのすけは小さく呟いた。