• テキストサイズ

神威の巫女【刀剣乱舞】R18

第9章 桜の樹の下で 加州清光②※R18



時間はとても残酷だ。
留めておきたい記憶を、知らぬ間に奪っていく。

母様や父様達と共に過ごした記憶、母様達の顔や声。

「ひゅうが様はお母様に似て、可愛らしいですね」

そう言って頭を撫でてくれたのは誰だっただろうか。

私が持っている一番古い記憶は、里に来たばかりの頃だ。
知らない場所、知らない大人達に囲まれ、私と妹は何故ここにいるのかすらわからなかった。

「お前達は親に捨てられた」

異能の力を恐れて捨てられたのだと。
だから、その力を必要とするこの里で暮らすのが一番だと。

毎晩寂しくて泣く妹を、泣きながらなだめた。
いつか母様が迎えに来てくれる。そう言い聞かせた。

けど、幾年が過ぎて悟った。
どんなに泣き叫んでも、誰も来てくれない。
誰も、助けてはくれない。
本当に私達は捨てられたのだと。

「また捨てられたくないなら、誰かに必要とされないと」

そう思ってからは、里のために力を使った。
だれかに必要とされたい。
ただその為に。

「なのに、どうして私が人柱に選ばれたの?」

きっともう、私はいらない。
こんな化け物のような力を持つ、私はいらないのだ。
けど、誰かに必要とされたい。
自分を認めてもらいたい。

審神者になると決めてからも、周りに必要とされたい。
けど、自分の力のことや弱さを知られたくない。
そうもがく私に、清光は私が欲しかった言葉をくれた。

どんな力であっても、側にいてくれると。
呼べば、すぐに駆けつけてくれると。

実際、清光は来てくれた。
倒れる直前、清光の名前を呼んだだけなのに、目を覚ましたら本当に彼が来てくれたのだ。

だからきっと、清光なら受け入れてくれる。
清光だけじゃない。きっと本丸内のみんな、受け入れてくれる。
そう、信じたい。

/ 150ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp