第7章 歩く姿は百合の花 へし切長谷部※R18
長谷部が部屋を去って間も無く、ひゅうがは自室を後にした。
早歩きで目的の場所へと向かうが、まだ着かない。
「もう五虎退待ってるよね……」
鍛冶場や鍛刀した刀が置かれている顕現の間は、中庭を抜けた回廊の先にある。
ひゅうがは近道をしようと中庭へと向かう。
「誰もいないよね……、よいしょっと」
周囲に誰もいないのを確認し、足袋を脱ぐ。
素足で中庭へ降りると、ひゅうがは急いで中庭を渡りきり、また足袋を履こうと縁側に腰を落とした。
そして、ふと今通った中庭を見ると、違和感に気づく。
目の前には、ひゅうがが歩いたところをなぞるように咲く、幾多の花。
中庭は季節の花が咲いてはいたが、ここまで無造作には咲いていなかったはず。
「……うそっ、えっ?」
自分のせいだ。
それは間違いないだろう。
しかし、原因がわからない。
ひゅうがはどうしたらよいか逡巡するが、五虎退を待たせていることが気にかかり、ひとまず後回しにしようと考えた。
足袋を履き、再びひゅうがは五虎退が待つ部屋へと駆けて行った。