第6章 座れば牡丹 歌仙兼定※R18
「歌仙……」
ひゅうがを強く抱きしめると、彼女も抱き締め返してくれた。
しばらく抱き合った後、歌仙はゆっくりとひゅうがから身体を離す。
結合部が離れ、名残惜しく淋しい気持ちになるが、それ以上に歌仙の心は幸せで満たされていた。
こんなに満たされた気持ちは初めてだ。
今なら、わかる。
歌仙がひゅうがに抱いていた感情が、何なのかを。
「主、僕は君のことが……、ひゅうがが好きなんだ」
「……歌仙」
ひゅうがはきっと、誰か一振だけを選ぶことはしない。
想いが交じり合うことなど、決してないとわかっている。
なのに、少しでもひゅうがの心に自分の痕跡を残したい。
「ずるいな僕は……主が困るってわかってるのに。だけど……ただ知っておいて欲しかったんだ」
「歌仙、……ありがとう」
この想いは、一方通行でいい。
ただ、ひゅうがのそばにいられれば満足だ。