第6章 座れば牡丹 歌仙兼定※R18
ひゅうがと加州との睦ごとを見て以来、歌仙は自身に起きる異変に戸惑っていた。
彼女を見る度にひゅうがの淫らな姿が思い出され、身体が疼いてしまうのだ。
劣情に駆られ、ひゅうがを蹂躙してしまいたいと、雄芯が悦を求める。
時には、ひゅうがとの淫靡な夢を見てしまい、抑えられないほど猛ってしまった熱塊を自分で慰めることすらあった。
「…………っ」
こんな自分は卑しく、雅さの欠片もない。
歌仙はひゅうがを避けるようになり、彼女と目が合ってもすぐに逸らして、その場から離れるようにした。
だが、日を追うごとにひゅうがのことを考えることが増えている。
どうしているだろうか、また加州と一緒なのだろうかと、頭の中が整理出来ず、苦しい。
この感情は何なのだろうか。
歌仙は日々苦しくなる胸の内を、へし切長谷部に相談することにした。
「長谷部、君は主を抱きたいと思ったことがあるか?」
長谷部と歌仙は同じ日に顕現したが、常日頃から主について話す彼なら、少しはそのような気持ちになるのではないかと期待したのだ。
「なっ、何をいきなりっ⁉︎」
遠征の帰り際、へし切長谷部に聞いてみたのだが、唐突過ぎたようだ。
長谷部は歌仙の想像以上に慌てふためいた。
そして、他の者に聞かれてはいないか周りを見渡す。
「主はこの本丸で唯一の女性だ。いくら僕らが刀だからとて、主にその……」
「邪な感情を抱くとでも?」
長谷部の目が鋭くなり、歌仙を睨みつける。
「邪な感情とは違う。彼女に惹かれて、そう思うことだって……」
「……不愉快だな。俺らは刀、主を守り、共に在るためにいる。浮ついた感情で主を汚すな」
長谷部に言わせれば、刀は主に惹かれるのは至極当然だと。
そして、邪な思いがあるなら、当面の間主に近づくなと言われてしまった。
「確かに、しばらくは主に会わないほうがいいだろうな」
遠征から戻ると、長谷部はもう夜も遅いからと、さっさと部屋に戻ってしまった。
歌仙はなんとなくすぐに部屋へ戻るのが躊躇われ、本丸内をゆっくりとした足取りで歩く。
歌仙の部屋が近づき、ふと溜息をついて顔を上げると、部屋の前に誰かが佇んでいるのが目に入る。
「主っ?」
しばらくひゅうがと距離を置こうと思っていたというのに。
歌仙は俯き、ひゅうがの顔を見ないようにした。