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神威の巫女【刀剣乱舞】R18

第5章 立てば芍薬 加州清光



本丸から少し離れた湖。
ひゅうががよくそこで佇んでいる姿を加州は何度か見かけていた。

遠目にはひゅうがの姿は見当たらなかったが、不自然なほど草が伸びている場所があるのが気にかかり、加州は湖の近くまで足を進めた。

「こんなところにいたんだ……」

湖のほとり、背の高い草の中に隠れるようにひゅうがが寝転んでいた。

「主、昨日は四振りも顕現したんでしょ?身体は大丈夫なの?」

ひゅうががゆっくりと目を開けると、上半身だけ身体を起こし、顔を俯かせた。

「身体は何ともないよ。むしろ元気なくらい……自分でも驚いてる」

元気と言っているが、声の調子は暗い。
加州がひゅうがの顔を覗き込むと、目が赤く、腫れていた。
一人で泣いていたのだろうか。

「主……泣いてたの?」

「…………」

ひゅうがは何も答えず、加州に背を向ける。
初めて会った時もこんな感じだったなと、加州は小さく笑った。

彼女の心は脆く、弱い。
一人になるのを恐れているのに、辛いことなどの重荷を一人で背負い、孤独で在ろうとする。

そんなひゅうがを支え、彼女の心に寄り添いたい。
加州は自分に背を向けるひゅうがを後ろから抱き締めた。

「主……、俺のこともっと頼ってよ」

「加州……」

抱き締めたひゅうがの身体は細く、力を込めれば折れてしまいそうだ。

「私は……自分の力が怖い」

ひゅうがが小さく呟いた。

こんのすけは以前、ひゅうがの力は数多いる審神者の中でも、群を抜いていると言っていた。
だが、ひゅうがの自己否定が強すぎて力が不安定だとも。

「審神者として生きるって決めたのに、怖がってたらダメだってわかってはいるんだけど……」

ひゅうがが持つ異能の力。
加州はまだ、それがどんなものかは知らないでいた。
だが、ひゅうがの力がどのようなものであろうと、加州のひゅうがへの想いは変わらない。

「怖いなら、俺が主の側にいるよ。どんな力であっても、ずっと……ひゅうがのそばにいるから」

「……ありがとう」

ひゅうがが加州の手にそっと触れる。
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