第5章 立てば芍薬 加州清光
早朝、加州はひゅうがの部屋を訪れた。
以前自分を顕現した翌日、彼女が部屋で倒れていたのを目の当たりにしていた加州は、ひゅうがを心配して様子を見に来たのだ。
「主、起きてる?」
障子越しに声を掛けるが返答はなく、物音一つ聞こえない。
「主、いないの?開けるよ?」
心配になり加州が障子を開けると、そこにはひゅうがの姿はなかった。
「主……?」
こんな朝早くから、どこに行ったのだろうか。
ひゅうがはいつも早起きだが、大抵は自室にいる。
朝餉を作りに行くにはまだ早過ぎるため、加州は不思議に思う。
「…………」
少し待てば戻って来るだろうか。
加州は部屋で待つか悩んだが、心のどこかがざわつく。
今すぐひゅうがのもとに行かなくてはならない。
そんな気がしたのだ。
加州は踵を返し、ひゅうがを探しに部屋から出て行った。