第4章 二振目 へし切長谷部②※R18
「はぁ……」
「お疲れなら、お背中を流しましょうか?」
ひゅうがが大きくため息を吐いたあと、予想外のことが起きた。
「……えっ⁉︎」
ひゅうがの背後、湯船に先客がいたのだ。
加州はいつもひゅうがに配慮して、早い時間に風呂を済ませていた。
だが、それは本丸に二人きりだけだった頃のこと。
本丸に刀剣男士が増えれば、風呂のタイミングが被ってしまうこともあるというのに、ひゅうがは確認もせずに風呂場内に入ってしまった。
「……は、長谷部?」
持っているタオルに目をやる。
身体を隠すものは、この小さいタオルのみ。
「主、こんな夜遅くにお風呂ですか?」
「えっと……私はこのくらいの時間にお風呂に来ていて……」
薄暗い風呂場内に、長谷部の身体が蝋燭の灯りに照らされている。
引き締まった身体に、すらりと伸びた手足。
いけないと思いつつも長谷部の身体が目に入り、ひゅうがは鼓動が早くなるのを感じた。
彼女は目を逸らすと、長谷部に背中を向ける。
「それは失礼しました。明日からは気をつけます」
長谷部は焦る様子もなく、むしろ平然としていて、ひゅうがに配慮して風呂場から出ていく様子もない。
「失礼のお詫びとして、主のお背中、この長谷部に流させてください」
「えっ、いや……ちょっとそれは……」
こちらに近づいてきた彼は、ひゅうがの後ろにしゃがむと、彼女の両肩に手を置く。
ひゅうがはますますどきどきした。
「主、私はただ、主のために何かして差し上げたいのです」
「…………」
彼らは元は刀。
主を想い、主の為に力を尽くすのが常。
顕現したばかりの長谷部には、男女の違いどころか、きっと女性の裸になんて興味などなく、自分だけが意識しているのに過ぎない。
ひゅうがはそう思うことにした。
「お、お願いします……」
「それでは主、失礼致します」
念のため、ひゅうがは下半身が見えないようタオルを掛け、胸元は腕組みをして隠した。