第15章 情欲と理性の間で 一期一振※執筆中
ひゅうがは顕現の間に行く途中、中庭がある廊下で、ふと空を見上げた。
眩しさに目を細めてしまうほど、今日は雲ひとつない晴天だ。
雨の降る気配など、微塵もない。
ひゅうがは足を止めると、身を屈める。
中庭には季節の花が咲いており、彼女は手を伸ばし、草が生えていない土の上をツンツンと指先で突っついた。
「…………」
ひゅうがが土を指先で突いた一泊後、ぽこんと何かの芽が顔を出した。
やがてそれは茎をぐんぐんと伸ばし、小さな白い花を咲かせる。
何も生えていなかったところに、命を芽吹かせた。
それは、生命を司る力によるもの。
ひゅうがが持つ、異能の力だ。
そして、彼女の妹が持つ異能の力は。
「大気を司る力……」
ひゅうがの妹なら、この晴天をたちまち嵐に変えることだってできる。
他の本丸から政府に送られていた報告書には、史実と異なる天候によって歴史の改変を引き起こしていると記載されていた。
天候の異変がひゅうがの妹によるものならば、ひゅうがの本丸も調査に行くべきだと政府から急かされていた。
「調査対象の歴史は二つ、江戸か戦国か……」
今回の任務は、その時代に縁のあるものを選ぶ必要がある。
個人差はあるが、刀であった記憶を持っている男士がいれば、僅かな異変でも気付くとひゅうがは考えていた。
「さて、打刀二振り……どの時代の刀が来るかな」
ひゅうがは立ち上がり、緋袴の乱れを直すと再び顕現の間へと向かっていった。