第15章 情欲と理性の間で 一期一振※執筆中
一期一振の部屋を出たひゅうがは早足で自室へと戻っていった。
勢いよく障子を開け、ピシャリと障子を閉めると、ひゅうがは大きなため息をつく。
「幼子かぁ……」
自室に置いてある姿見に写る自分の姿を見て、ひゅうがは再びため息をついた。
姿見に映るのは、不満げな表情をした少女の姿。
「確かに見た目はこんなだけど……」
自分の体が成長しないことにひゅうがが気付いたのは、いつだっただろうか。
初潮を迎え、女性として成熟したその日をきっかけに、彼女の体は時を止めたかのように、成長しなくなった。
毎年、共に暮らしていた巫女たちと社の柱に背丈の傷を付けていた。
年の近いもの同士で背の高さを競い合っていた中、ひゅうがだけが同じ箇所に傷をつけ、他の巫女は段々と傷つける箇所が高くなっていく。
なのに、誰もひゅうがの体のことについて、触れようとはしなかった。
だから、ひゅうがもずっと気にしないでいられたというのに。
「はぁ……幼子ねぇ」
確かに、刀剣男士達と比べれば、そこまで長く生きているわけではない。
だが、さすがにそこまで幼く見えてるとは思わなかった。
「ま、事実だから仕方ないけど……」
ひゅうがは諦めたように笑い、俯いた。
すると障子の向こうからこんのすけに声をかけられる。
「ひゅうが様、いらっしゃいますか?」
「……なに?」
障子が開き、こんのすけが部屋へと入る。
「ひゅうが様、探しましたぞ!」
「ごめん、用事を済ませてた。どうしたの?」
「刀鍛冶から新たな刀の鍛刀が終わったと、報告がありました。残りの二振りは、まだかかるとのことです」
まだ鍛刀中の二振りは、恐らく太刀か、大太刀だろう。
ひゅうがが考えている作戦に必要な刀種は、短刀、脇差、そして打刀だ。
「そう、刀種はわかる?」
「鍛刀にかかった時間は違いましたが、二振り共に、打刀とのことです」
打刀なら、好都合だ。
二振りを顕現次第、隊の編成を決めてしまおう。
「報告ありがとう。すぐに顕現の間に向かうよ」
ひゅうがは自室から出ると、顕現の間へと向かって行った。