第15章 情欲と理性の間で 一期一振※執筆中
顕現の間に入ったひゅうがは、部屋に飾られた二振りの刀を見比べていた。
両振りともに打刀だが、それぞれ特徴があり、美しい。
ひゅうがは向かい合わせに飾られた二振りのうち、左手側の刀の正面に立ち、その姿を見る。
「龍……、なんて綺麗なんだろう……」
ひゅうがは刀身に彫られた龍をまじまじと見つめていた。
書物で龍の絵が載っていたのを見たことはあったが、その時は今のように心を掴まれることはなかった。
ひゅうがは龍が彫られている刀の紋を確認するが、紋からは何もわかりそうにもなかった。
「なんだろう。太陽……かな」
ひゅうがは首を傾げながら振り返ると、反対側に飾られている刀に視線を移した。
「こっちは…………ん?」
部屋の右手側にある刀の紋を確認すると、ひゅうがはその紋に僅かだが見覚えがあることに気が付いた。
どこでだろうか。
ひゅうがは記憶を辿ろうとするが、思い出せない。
彼女が所持している刀の紋がこれだっただろうかと、ひゅうがは思い返すが、その刀の紋は山桜に二重三日月紋。
対してこの刀の紋は山が描かれたもので、全く違う。
「……だめだ、わからない」
見覚えはあるのに、どこでなのか思い出せない。
里で見たのか、それとももっと前に見たのか。
いっそ、顕現してみれば何か思い出せるのかもしれない。
「貴方は……誰なの?」
ひゅうがは手を伸ばし刀を手に取ると、力を注ぎ込んだ。
すると刀は光に包まれ、室内に眩い光が満ちる。
「…………っ」
その余りの眩さに、ひゅうがは目を閉じた。