第14章 花と鯰 鯰尾藤四郎
「鯰尾っ、だめ……っ!」
加州、と大声で叫びたくなったが、押し倒されている姿を見た加州がどのような行動に出るだろうか。
加州は勿論、他の男士とも険悪な雰囲気になる可能性だってある。
そもそも三振り程度なら、反動で倒れることもないかもしれない。
それならばこのままとも思ってしまうが、なかなか部屋から出てこないことを不審に思って、外で控えている加州が来てしまうかもしれない。
あれこれ考えている間に、鯰尾は緋袴の帯に手を掛け、帯を解こうとする。
「主?抵抗しないのですか?それなら……」
「や、……ぁっ」
一か八か、ひゅうがは心の中で強く一期一振の名を呼んでみた。
以前、彼女は加州を無意識に一度、意図的に更にもう一度、自分の元へと呼んだことがある。
お互いの心の繋がりがあるからこそ呼べたのだと思っていたが、もしかしたら他の男士も呼べるのでは、と。
そして鯰尾の兄弟である一期一振なら、諍いなくこの場を収められるだろう。
だから一期一振、彼に今ここへ来て欲しい。
望みは薄い。
けど可能性はある。
ひゅうがはキュッと唇を噛みしめた。