第14章 花と鯰 鯰尾藤四郎
「この部屋は鍛冶場と隣接してるけど、続き部屋もあって……」
少し話をしたら、加州に鯰尾の案内を頼もう。
そう思いながらひゅうがは障子を開け、続き部屋へと鯰尾を引き入れた。
「さらに奥へ行けば、別の廊下に出られるから、秘密の通路みたいで……わっ!?」
顕現の間に繋がる別の道を鯰尾に説明していると、鯰尾は急にひゅうがを背後から抱きしめた。
「鯰尾?」
「主、油断大敵……ですよ?敵に背中を見せたらだめって教わりませんでした?」
鯰尾は無邪気な笑顔で笑うと、ひゅうがを床に押し倒す。
ひゅうがの手首の自由を奪おうと、髪紐を解くと鯰尾の髪がさらりとひゅうがの胸元に落ちる。
「鯰尾?なんで……」
「今を逃したら、主と二人きりになる機会、もうないかもしれないかなって。そしたら、色々出来ないじゃないですか」
鯰尾がひゅうがの首筋を甘噛みし、ちゅっと軽く吸い上げた。
「色々って……んっ!」
甘い痺れが駆け抜け、びくんとひゅうがの体がはねる。
慌てて鯰尾の体を押し退けようとするが、鯰尾はひゅうがと目を合わせ不敵に笑う。
その表情にひゅうがの心臓は早鐘を打った。
「や……」
この状況、芳しくはない。
大抵は刀剣男士に求められるまま体を繋げてしまうひゅうがだが、今はそうはいかない。
今ここで感情が高まるようなことをすれば、力が溢れてしまうだろう。
そうなれば、残りの三振りを同時に顕現させかねない。