第13章 近侍であるために 加州清光
その日加州清光は朝餉を終え、稽古場に来ていた。
ひゅうがが自室で書類整理をしている合間、まだ誰も来ていない稽古場で、太い木刀を手に幾度も素振りをする。
「…………っ」
誰より強く、誰よりも早く。
ひゅうがを守り、戦う力を求めて加州はひたすら強さを願う。
加州は手を止め、手巾で汗を拭うと、外を見上げた。
稽古場からは、ひゅうがの部屋の窓が見える。
ひゅうがが自室にいる時は窓が開けてあり、時折ひゅうがの姿が見えるが、今は閉まっている。
恐らく書類整理が終わったのだろう。
加州は稽古場の隅に行き、木刀を片付ける。
すると、背後から声を掛けられた。
「加州っ!やっぱりここにいた」
加州が振り返ると、ひゅうがが白衣と緋袴を着た姿で立っていた。
「主……どうしたの?」
ひゅうがの姿を見て、加州は一瞬だけ言葉に詰まる。
彼女が緋袴を着るとき、それは新たな刀剣男士を顕現させる時だ。
「今から何振りか選んで顕現するから、ついて来て」
「……わかった」
ひゅうがはそう言うと、さっさと刀鍛冶のもとへ歩き出して行った。