第12章 面影
「…………っ‼︎」
彼女の体が弓なりに反り返るやいなや、水を吐き出したのだ。
そして、弱々しくはあるがゆっくりと呼吸をし始めた。
死人が息を吹き返した。
確かに彼女は死んでいたはずなのに。
だがそれだけではない、こんのすけの目の前で、彼女の傷がゆっくりと消えいく。
大きく裂けた傷は繋がっていき、小太刀が刺さっていた箇所は塞がっていった。
こんのすけやその場にいた誰もが驚愕し、目の前の光景をただ見ていることしか出来なかった。
「何故急に……この小太刀と関係が⁉︎」
彼女に刺さっていた小太刀を見ると、鍔に彫られていたのは、桜に二重三日月の紋。
その紋を見るや、こんのすけは打ち震えた。
「ま、まさか……そんな、この方はっ!」
桜三日月紋は、こんのすけが以前仕えた審神者が使っていたもの。
側に仕えていたのはほんの一時だったが、見間違えるはずがない。
こんのすけは恐る恐る、彼女に近付いた。