第12章 面影
ひゅうがを見付け、この本丸に連れきたのは政府だ。
彼女は山麓の川辺にいたという。
その山は一昔前は神が住まう森として畏れられており、その深い森には森に精通したものでも入らないほどだ。
それは政府とて同じ。
だがその山の麓に新たな審神者になり得る程の力を持つ存在を感じると、先見の異能を持つ審神者によって告げられた。
これまでに類を見ない程の力だと言われ、政府は急ぎ使いを走らせたが、無駄足に終わった。
山の麓の川辺、彼女はそこで伏していた。
生気のない顔に、身体中にできた創傷。
手足には縄で縛られていた跡と、背中には小太刀が刺さっており、生きているとは到底思えない状態で彼女はそこにいた。
身元を示すようなものは何も所持しておらず、当初は彼女が何者かはわからなかったが、新たな審神者となるはずの存在が見つけた時には死していた。
その事実に政府は落胆した。
さすがの先見の異能も、相手の生死までは見れなかったのだろう。
どのような事情で亡くなったにせよ、せめて綺麗な姿できちんと弔ってやりたい。
そう思った者が背中の小太刀を抜いた瞬間、それは起こった。