第11章 たきしめる 歌仙兼定※R18
「……やっぱり」
歌仙が様子を見ていると、廊下の向こうにひゅうがが歩く姿が見えた。
寝間着に、上衣も羽織らずにいる姿は無防備過ぎるとしか言いようがない。
歌仙は自分の上衣を手にすると、ひゅうがの後を追いかけた。
「主、こんな時間にどうしたんだい?まさか、夜這いの帰りだなんて言わないでくれよ?」
歌仙はひゅうがに声を掛けると、振り返ったひゅうがの肩に上衣を掛けた。
「歌仙、夜這いだなんて……そんな冗談を。昨夜は粟田口の子全員を寝かしつけたので、その帰りですよ」
「粟田口の……短刀の子たちかい?」
それにしてはおかしい。
粟田口短刀達の部屋は、今ひゅうがが来た方角とは逆のはずだ。
訝しげな表情をする歌仙に、ひゅうがは笑った。
「ふふ、粟田口全員ですよ」
「………全員?」
粟田口全員ということは、太刀の一期一振も含まれるのだろうか。
歌仙は思わず眉間に手を当てた。
一期一振はひゅうがとは距離を置いているように見えたが、そうではなかったのか。
どのような経緯であれ一晩過ごしたということは、一期一振もまた、ひゅうがに特別な感情を持ち始めたのだろうか。