第1章 雨の降る夜
「ふぅ……」
一通り洗い終わり、湯船に浸かって考える。
アイツの常識とはいえ、男とキスしてしまった。
しかも何言ってるか訳わかんねぇ……。
「はぁ……」
天井に向かって、何度目かのため息を吐き出すと同時に風呂のドアが開いた。
「夏希、身体洗ってあげる」
「いや、洗ったし大丈夫だから!」
「遠慮しないで、ね?」
「ね? じゃない、マジで大丈夫だから!!」
俺の言葉など無視して、ズカズカと浴室に入って来るハル。
「早く出てけって!」
「夏希が洗わせてくれるまで待ってる」
そう言って隅っこにちょこんと座って動かない。
「あー! もー! わかったよ!!」
俺は諦めて、椅子に腰掛けた。
「背中だけでいいからな、一回洗ってるし」
「うん、わかった!」
ハルはボディーソープとスポンジを受け取り嬉しそうに泡立て始めた。