第2章 2
「かえで。そよ。来たか。」
「お兄様!お待たせしました!」
「兄様、お久しぶりです」
茂茂の待つ部屋に入ると、茂茂の前に置かれた二つの席に腰を下ろした。
茂茂がそうするように頼んだのであろう
盆には2人の好きなものがそれぞれ用意されていた。
それに気付いたそよ姫はかえでの方をみて、嬉しそうに微笑んだ。
「ではいただこう」
「「いただきます」」
手を合わせて盆の上のおかずに箸を伸ばす。
さすがに将軍の食事とあってどれも豪華で彩りも鮮やかだ。
「みてー!お兄様、かえでちゃん!このたこさんウインナー
とても可愛らしい!」
「そよ、この白身魚の天ぷら本当に美味しいから食べてごらん」
「またー?かえでちゃんはいつも天ぷらですのね!」
「そよかかえで。茶を。」
「兄様はいつもお茶ですね」
「水っ腹になっても知らないでございますよ」
3人で食事とお話を楽しんでいると、ふと茂茂がかえでの頬の腫れに気がついた。
赤くなった頬が痛々しくみえる。
だが、かえでは何事もないかのように振舞っている。
その笑顔が率直に聞くことを戸惑わせた。
「...かえで。最近はどうだ。またじいやを困らせているようだが。」
「兄様っ…私困らせてなどいませんっ。
ただじいやが心配性なのです。」
「そうそうー。じいやは本当に心配性ですよねー」
「「ねー?」」
ふふっと楽しげに笑うかえでを見ていると
やはり何も聞けなくなってしまう。
神よ、いるならば。
この哀しい子に
どうか優しい世界を。