第2章 2
お茶のお稽古が終わり、自室に帰る。
ふーっと息を吐いて深呼吸。
叩かれた頬がまだヒリヒリと傷んだ。
これから昼食を食べたら、今度は武術の時間だ。
これだけはなかなか上手にとはいかなくて
ついていくのがやっと。
でも、先生はおもしろい方だし
その方がやりがいがあっていい。
「かえでちゃん?入ってもいいかな?」
「そよ!どうぞ」
コンコンと襖をたたいて、入ってきたのはそよ姫だった。
そよ姫は私の妹にあたる。
城内で私を知る少ない人の1人であり、いつも仲良くしてくれる。
こんな私をお姉ちゃんと呼びたがるもんだから
やめてくれと止めるのに必死だ。
「かえでちゃん今日お兄様がお暇でいらっしゃるの!
よかったら3人でお食事しない?」
「わあ!それは素敵ね!是非そうしましょう!」
私達の兄様。
現将軍徳川茂茂。
いつも忙しいけれど、寡黙な優しさで私のことも見守ってくれる
優しい兄様。
私は他所からきた母に顔立ちが似ているから
2人とは並んでいても兄弟のような感じはしない。
母譲りの瞳も、嫌いじゃないけれど
2人と似ていたらとたまに考えてしまう。
「じゃあ行きましょう!お兄様が待っているわ!」
そよ姫に引かれて、廊下を駆ける。
3人で食事を出来るのが嬉しくてたまらないといった様子だ。
そんなそよ姫の姿に、自然と笑みがこぼれた。