第1章 1
「...今日はたのしかったか?」
「ええ!人生の中で五本の指に入る程楽しかったわ!」
彼女は笑いながら五本指をたてた。
幼さが残るその仕草に心くすぐられながら、そんなに楽しませる事が出来たのかと嬉しくなった。
「ねえ、銀ちゃん。また遊びに行ってもいいかな?」
「おう。いつでもこいよ。」
そういうと
「ありがとう!これで私達はもうお友達ね!」
と嬉しそうにくるくると回った。
「(お友達か...)」
月の下笑いながら回る彼女はきらきら輝いていた。
「もう帰らなくちゃ。銀ちゃんまたね。」
彼女は突然止まると、俺の手をぎゅっと握って駆け出していった
俺の静止の声も聞かずに。
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銀時の元から離れたかえではまっすぐ城へ向かっていた。
道はよくわからなかったが、城は大きいから常に前に見えているし
籠がいれば拾えばいいと思い、あまり気にしていなかった。
とても素敵な人だった。
真っ直ぐな目をした、優しいお侍さん。
この時間が止まればいいとつい長居をしてしまった。
きっと流石に怒られる。2、3日は城から出してもらえないかもしれない。
それでもいいと思えるくらいに今日はいい1日だった。
「かえで様。お帰りでよろしいですか?」
「じいや...。やっぱりいたのね。」
路地裏から現れたじいやは少し疲れたような
嬉しそうな顔をしていた。
「楽しゅうございましたか?」
「ええ。とっても。しばらくはお稽古事に専念できそう。」
「ほう。それはようござんした。では明日からみっちりと」
微笑み合いながら、じいやの待たせていた車にそっと乗り込んだ。