• テキストサイズ

短篇集

第6章 『由良の途を』②




「何も繕はない 名前っちの方が、魅力的ッスよ?」

『っ ///』


なによその殺し文句…

なんでそんなにアンタは


私が欲しくて堪らない言葉ばかりくれるのよ



『…だから黄瀬は…一目見た時から、苦手だったのよ』

「…」


苦手…

どうしていつも、黄瀬を評価する時はこの単語ばかり使うのだろう

「苦手」…それはつまり、「嫌い」とは一番縁遠い言葉


一番、「嫌い」にはなれない人に対する言葉…




「…俺、バスケ部入るんスよ」


『え…?』



「 名前っちも、一緒にどうッスか?」



…えっと、それはつまり…マネージャーをやれと言うことなのだろうか…?



「俺、 名前っちが側で試合応援してくれたら、絶対普段より頑張れるッス!」

そんな尻尾振って言われても…

『…嫌よ。海常はスポーツ系の部活はほとんど全国クラスじゃない。そんなの、一人の時間を無くすのと同じことでしょ。誰に何と言われても、私は、今のままでいるつもりなんだからっ』

「…それって、今のまま誰とも関わらないって事ッスか…?」

『ええ』

頑なな彼女に黄瀬はムッとし
細い両肩をガシリと掴む

「っ…だーーーかーーーーらーーーーっ!!
それじゃあ勿体無いって!!!」

上から必死の形相で声を張る男に
どうしてか
つられてムッときてしまう

『勿体無いとかどうでも良いわよ!
私はね、楽な道を歩きたいの!
大体あんたにとやかく言われる筋合い無いわよ!!』

「今の方が絶対皆から好かれるッスよ!!」

だって俺がそうだったんだから


『そんなこと有り得ない!皆、私と距離置いたもの!!』

私は何をムキになってるんだろう

昔を思い返し
少し涙が滲み出す

「じゃあ俺がっ

俺は!!!
今の 名前っちの方が好きッス!!
だから…ッ!!!」


『ッ……!』


その言葉に一瞬
息を飲んでしまった


だから


なんであんたは

私の欲しい言葉ばかり……


流れそうになるものを堪え
歯をくいしばる


/ 54ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp