第6章 『由良の途を』②
「何も繕はない 名前っちの方が、魅力的ッスよ?」
『っ ///』
なによその殺し文句…
なんでそんなにアンタは
私が欲しくて堪らない言葉ばかりくれるのよ
『…だから黄瀬は…一目見た時から、苦手だったのよ』
「…」
苦手…
どうしていつも、黄瀬を評価する時はこの単語ばかり使うのだろう
「苦手」…それはつまり、「嫌い」とは一番縁遠い言葉
一番、「嫌い」にはなれない人に対する言葉…
「…俺、バスケ部入るんスよ」
『え…?』
「 名前っちも、一緒にどうッスか?」
…えっと、それはつまり…マネージャーをやれと言うことなのだろうか…?
「俺、 名前っちが側で試合応援してくれたら、絶対普段より頑張れるッス!」
そんな尻尾振って言われても…
『…嫌よ。海常はスポーツ系の部活はほとんど全国クラスじゃない。そんなの、一人の時間を無くすのと同じことでしょ。誰に何と言われても、私は、今のままでいるつもりなんだからっ』
「…それって、今のまま誰とも関わらないって事ッスか…?」
『ええ』
頑なな彼女に黄瀬はムッとし
細い両肩をガシリと掴む
「っ…だーーーかーーーーらーーーーっ!!
それじゃあ勿体無いって!!!」
上から必死の形相で声を張る男に
どうしてか
つられてムッときてしまう
『勿体無いとかどうでも良いわよ!
私はね、楽な道を歩きたいの!
大体あんたにとやかく言われる筋合い無いわよ!!』
「今の方が絶対皆から好かれるッスよ!!」
だって俺がそうだったんだから
『そんなこと有り得ない!皆、私と距離置いたもの!!』
私は何をムキになってるんだろう
昔を思い返し
少し涙が滲み出す
「じゃあ俺がっ
俺は!!!
今の 名前っちの方が好きッス!!
だから…ッ!!!」
『ッ……!』
その言葉に一瞬
息を飲んでしまった
だから
なんであんたは
私の欲しい言葉ばかり……
流れそうになるものを堪え
歯をくいしばる