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短篇集

第7章 『嘘つきとの日常』王馬小吉




握ったその手は思いの外小さくて

いつもいつも
ほんの少しだけ心配になる



文句を零しながらも
それでもオレにいつもついてきてくれる名前ちゃんが

オレは可愛くて仕方ないんだ



白いエプロンに上下繋がった灰色の制服は
裾をヒラヒラとはためかせ
靡く赤黒い髪と共に揺れている


彼女、苗字名前もまた
この学校に招かれた特殊な人材


彼女は「超高校級の料理研究家」であり、今迄に数々の賞を受賞してきた天才児


そして




オレの初恋の人




「明日こそ作って来てよね?」

頬を膨らませ振り返る


『んー…善処するよ
ごちゃごちゃめんどくさいし』

嫌味混じりに返ってきた言葉は
優しい音色を孕んでて


オレには凄く
心地いい



「テキトーな名前ちゃんなんか
大っ嫌いだよ」



笑ってそう言うのが
オレにとって精一杯の


愛の告白




「好き」だなんて
一生言ってやるもんか

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