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短篇集

第6章 『由良の途を』②




コンコン…



壁を叩く音が聞こえた





…これは、故意的なものよね…?


『…うそ、信じらんない』



一気に先ほどまでの高揚感は逃げていく


暫くしてまた、コンコン…
壁が叩かれた

そして壁越しに
「名前っちー!ベランダに出てー!」
声が…

あぁ…ここ、こんなにも壁薄いんだ…
初めてこの部屋の欠点を知りました


『……出ないと、いつまでも壁叩かれそう…』


げっそりした顔を何とか繕い、仕方なくベランダに出る


『…出たわよ』


薄い板越しに、お隣さんに声をかける


「あ!ほんとに出てくれたんスかっ!じゃあ今からそっち行くんで!!」



『……………はあっ!!!!??』


え、ちょっと待て
今このモデルなんて言いやがった!!?
こっち来るって!!?

ふざけんなっ
レディーの家にズカズカ男入れるわけないでしょう!?
しかも相手はあの苦手な黄瀬涼太!
くんな、マジでくんな!!

『ちょっ、ふざけんじゃないわよ?!…って……あああああ!!!!だめだめだめだめ!!!』

本当イかれてる!
何でベランダ這いつくばってこっち移動しようとしてんの!!?
落ちたらどうすんのよ!
ここ3階!!!


「あ、ちょっと手ぇ貸して欲しいっス」

なぜそんな冷静なんだ


『ああああ…もう!分かった!分かったから!!戻って!!玄関の鍵開けるから!!そっちから入って!!!』

「あ、マジっスか?それは助かりますー」



そうしていそいそと自分の家へ戻る黄瀬




私は疲労し、手すりに寄り掛かる


『…はぁ…なんなのよ、あいつ…』




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