第6章 『由良の途を』②
事の始まりは非常識極まりないものだった
休日、
私は唯一の趣味の絵を描いていた
今回は油絵だ
絵の具を洗うのが大変だし、油絵特有の匂いが部屋中を包む…
でも、私はこの匂いが案外好きだった
あ、でも中学の授業で一度やったテンペラは
あれは流石に近くで嗅ぐと鼻が曲がりそうだったなぁ
蒼い蒼い絵を、描くのが好き
書いている時だけ、何も考えず、何も心配せず、何にも恐れないでいられる
心が
とても落ち着くから
だからかな?
私服は青色のものが大半だ
そういえば、この部屋に何個か置かれている小物も
筆記用具も…ほとんどが青色だ
『あは…私って意外と単純な女なのかも』
どことなく自分が可笑しく思えた
疲れたから絵を途中で切り上げ、片づける
絵は部屋の隅に
『あ』
時計を見ればもう19時
晩御飯、何にしようか?
少し心が弾んだままの私は、手間のかかるものを作りたくなり
母から貰ったレシピ本をペラペラ捲る
そう言えば、冷凍庫に挽肉があったよね…
ガバァと冷凍庫を開け、確認する
うん、やっぱり
『これを解凍して、ハンバーグ作ろうか』
思い立ったが吉日だ
すぐさま準備に取り掛かろう
この高揚感が消えない内に…