第1章 轟焦凍と銀の髪
“見惚れた”
その言葉がまさに当てはまる
俺の足は自然と彼女の方へと流れていき
歩数を数えるごとに速度は増していった
学食の厚い戸を押し開け
彼女の目の前にたたずんだ
急な出来事に目を開く彼女に
なんと声を掛けるか思考を巡らせていたが
最終的に出た言葉は
とてもありふれたものだった
「…なぁ、隣…座ってもいいか?」
思いの外、冷静に話しかけることが出来た自分に少し感心しながら
彼女の返答を、眉尻を少し下げて待っていた
『え…う、うん。大丈夫ですよ…?』
彼女は少し困った顔をしていたが
拒否の言葉が返ってこなかったことに
俺は取り敢えず安堵した
彼女の左隣にゆっくりと腰を下ろし
人工芝の感触を味わいながら
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