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短篇集

第1章 轟焦凍と銀の髪




「…お前、普通科か…?」


彼女の顔を見た事が無かった為勝手にそう思い込んでいたが
いくらなんでも初対面の人に対してこの言い草は…
要らぬ誤解を生むんじゃないかと
発言してから後悔した

しかし嬉しいことに彼女はそれをあまり気に留めなかったようで
俺に気を遣ってか
少し口角を上げて、優しい顔をこちらに向けてくれた


『ううん、私、サポート科なの』



そう、少し自信ありげに言う彼女を
可愛らしい人だななどと
呑気なことを思っていた



『あなたはヒーロー科の轟くんだよね?体育祭…大変だったね』



言葉を選び話す彼女に
俺の過去が少し悟られていたことを感じた


「…そうだな」


それに対して
素っ気ない言葉しか出てこない自分に
段々と苛つきすら覚えた



「いつもここで食べてんのか?」



話を逸らすように話題を変える


『たまにかな』


なんか落ち着くんだよね、ここ


と少し照れながら笑う彼女の頬は
ほんのりと朱が混じっていた

俺は蕎麦を口に運びながら
無意識にずっと
彼女を見ていたことに気付いた


「悪い、食べ辛えよな…」


そう言い首を反対に向け
校舎の簡素なコンクリートを
視界に入れる

すると急に
景色は色を失った様な
そんな感覚に陥った

そこで初めて


これが一目惚れというやつなのか


そう認識せざるを得なかった



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