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短篇集

第5章 『由良の途を』黄瀬涼太




入学式まであと数日



緊張はない


ドキドキも、ワクワクもしない

だから私は、私が好きじゃないんだ

いつからこんなにも、何も無い人間に成っていたんだろう

生まれつき?

そんな事はない
だって小、中学校の入学式前日だって私はランドセルとカバンを抱きしめて寝たほどだもの

席替えだって、隣に誰が来るかってだけで胸を弾ませていた
誕生日だって………



ああ

私はいつからこんなにも…



友達からはおばさんくさいと片付けられるけど
そんな分類じゃないの
私は、私の事が

よく分かり過ぎてしまっているのだから

アイデンティティの確立が人より早かったとでも言うのだろうか
そんな立派なもんじゃあないけれど
当てはめるとすればそんなもんだろう

とにかく


自分について分かり過ぎていると



自分という存在に冷徹になってしまうんだ


分かり過ぎているから、こんな時どうすれば良いのかも把握してしまう

自分の事が分かり過ぎてつまらなくなった私は、
その理解の輪を
周りの人間へと広げてしまった

人間というものを

私は

自身の秤で、量るようになってしまった



そうして私は


自分を理解してから





恋が出来なくなりました



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