第5章 『由良の途を』黄瀬涼太
高校生になり
下宿を始めた
偶々親の転勤が入試直後に決まってしまった為だ
初めての一人暮らしは
最初は開放的で楽しいものだった
親は心配で、毎日メールをくれる
部屋は女子高生とは思えない程簡素なもので
必要最低限のものしか置かれていない
勉強机を置くために少し広めの部屋に住まわせてもらっている
ベッド付きでロフトの様な構造になっているので、ベッドの下には収納スペースが設置されている
これが、マンション選びの決め手になったのだが
あ、簡素な部屋だけれど一つだけ
この部屋で異彩を放っているものがある
絵だ
私の唯一の趣味
そのせいか既にこの部屋には絵の具の香りが染みついている