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短篇集

第3章 死柄木と一般人①




助けたのはただの気まぐれだったが
まぁ悪い気はしなかった


「…はぁ…お前、一人でおつかいも出来ないのかよ、使えないなぁ…」

なんて皮肉を口に出すが
その実、口角が上がらない様に抑えるのに必死だった

『使える様になるから!殺さないでください…!』


誰もそんな事は言ってないのだが
そもそも、先程こいつを仲間に取り入れたばかりだというのに
なぜ俺が、自ら自身のコマをかなぐり捨てるような愚かな真似をするとでも思ったのだろうか

いや、こいつは会った時からこうだった
この先、仲間として過ごして行っても
自らこの世界に来た訳では無いこの女は
この潜在意識を変える事は出来ないのかもしれない

「もう殺さねえよ」

そう暗示をかける様に女の頭を四指でなぞってみるが
きっと効果は無いのだろう

その証拠に
名前は怯えて動かない


こうなったのは自分の行いが招いた結果なのに

この帰結を哀しむ俺がいる


「仕方ねえな…」

そう言い、バーとは反対に足を進めてみるが
仕方がないのは、俺自身だった

『…えっ』

名前は死柄木の行動の意図を
まさかと疑うが
死柄木がこちらを振り返り

「行くぞ」と声を掛けて来たので
口元を綻ばせ、彼の元へと駆けて行く

『ありがとう…死柄木!』

「っ…」


その後は
何も喋る事が出来なかった

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