第2章 牛島若利とマネージャー
その後の練習では
いつもより調子の良い牛島さんを
鷲匠先生は何かあったのか?と首を傾げながら見ていたのを
レギュラー陣が含み笑いで練習していれば
気に食わなかったのか
最後に百本サーブをさせられた
「あーもうサイアクだね。鍛治くんあんなに怒んなくてもねー?」
大人げないなーとぼやく天童さん
「牛島さん、この後、自主練何しますか?」
これは日課のように聞いている言葉で
いつも簡潔な言葉が帰って来て
また体育館に戻る
はずだった
「…今日は、帰る」
「「「…はい?」」」
全員が全員、それこそレギュラー以外の
そこに居合わせた部員全員が
その異質な言葉に
思考がショートした
「……えっ…ぁ、はぃ…?帰るんですか…?」
我ながらおかしな日本語を口にしたなと思ったが
それ以上に、この人の「帰る」発言の方がおかしかった
だってあんた寮だろ、どこ帰んだよ
………寮か
「あぁ」
堂々と返答する牛島さんに
こちらも段々と思考がまとまって来た
「今日用事あるとか言ってなかったよねー?どしたの急に??」
そうだ
いつも先に帰る場合は
事前に何かしらの用事を伝えられているんだった
なのに今日は
「やらねばならない事が出来た」
いつもながら端的に答える
そう言われれば俺たちはもう「そうですか」と言うしかなくなってしまう
皆、どこか納得していない様子だったが
それでも、ぞろぞろといつもより少し広くなる体育館に戻っていく
そんな時
『お先失礼しますー』
そう、名前が部室から着替えて出て来て
各々「お疲れー」と一言挨拶を投げかける中
一人……
「苗字、一緒に帰るぞ」
「「「『……はい?』」」」
全員が一斉に振り返る