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短篇集

第2章 牛島若利とマネージャー





”ここ最近
牛島さんの様子がおかしい”

さっきの、マネージャーの仕事を奪う事件は
ここ数日で立て続けに起こっていて


この異変に気付いているのは
俺だけではなかった


やっと体育館に戻って来た牛島さんに
レギュラー陣が駆け寄る

「遅いよー若利くん」と牛島さんの肩に腕を乗せる天童さん

それ以外の人達は
注意すべきか
それとも応援すべきか
何と声を掛けるべきか迷っていた

そんな中、やはり牛島さんの自称親友でもある天童さんは
容赦なく言葉を連ねる


「もー、アプローチの仕方が下手すぎるよ若利くん!」

「…アプローチ?」



本人も自覚すらしていないことを言われても理解できないに決まっているのに

「そうだよ!女の子に優しくするのは基本だけどね!一辺倒もダメだよ?たまにはカッコいいトコとかも見せるのさ!そこにトキメキが生まれるんだよ?」


何を適当な事を言ってるんだ


「よく意味が分からないのだが」


首を傾げる牛島さん

それに対して
首を傾げる天童さん


「若利くん…もしかして最近の君の不自然すぎる行動の数々……無自覚でやってたりする…??」

「…なんのことだ?」

「ダメだこの子ーっ!!」


オーバーリアクションで後ろに腰を反る天童さんに
俺もつられて頭をおさえ、ため息をつく


「ウッソでしょ!!ド天然!!ここまで浸食してたの!!?」

おい天童、落ち着け、と三年生の先輩方がいよいよもって動き出すが
いやいやガツンと言わないと!この子卒業まで気付かないよ!!??
と必死の形相だ



「若利くんのそれは!!″恋″だよ!!!」



あーぁ…言ってしまったよ


誰もが分かってて
そして誰もが言及せず見守っていたというのに

痺れを切らした天童さんが爆弾を落としてしまった

俺だって一度は言ってしまった方が先輩にとって良いのではないかと考えたが
もしそれを災いに、調子を崩されたらと
危惧して避けていたというのに


恐る恐る
牛島さんの様子を伺ってみる
すると







「……そう、か」





まるで難問が解けた時の様な
そんな顔をしていた



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