第7章 近づく ~淡きひかり~
辺りが、夕闇の色に変わりはじめ、遠くから微かに届く笛や太鼓の音が、今日が祭りであることを思い出させる。
戻るなら今だ。
このまま進めば、もう、戻れない。
ひいろを欲する想いと、それを止めようとする想いがせめぎ合い、頭と心が別の動きをしようとする。
ひいろを抱き締めながら、心が揺れていると、俺の耳もとにひいろが、唇を寄せる。
「光秀様……もっと甘えても…いいですか?」
探るような、甘えるような女の声だった。女としての性を感じさせる、初めて聞くひいろの声だった。
その瞬間、心が決まる。
今は駄目だと。
「ここまでだ。」
そういいながら、背中の手を止める。ひいろの身体に力が入る。そしてまた、俺の耳もとで囁く。先程よりも近い、耳に触れそうな位置で。
「光秀様は、優しいんですね。……それとも」
「それとも?」
「臆病…なんですか?」
誘うような、試すようなその言葉に、一瞬鼓動が跳ねる。