第24章 願い2
その後もことねの子守りをしながら、焦れる思いをあやしつつ一日を過ごした。
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闇が全てを包み、灯された明かりが消える頃、それは現れた。
一瞬感じた膨らんだ大きな気配のうねりに、横たえていた身体が跳ね起きる。刀を掴み廊下に出ると、同じ様に出てきた家康の鋭い視線が刺さる。確認するように頷き、ことねの様子を見たあと、うねりの先へと急ぐ。
何かが起こった。
それを感じた者たちが動き出したのだろう。屋敷内の空気が変わり、その気配が一点へと向かう。
その向かう先にあるのが、ひいろの部屋。
刀を掴む指先に力がこもる。後に続く家康にも焦りの色が見えた。
早く、今度こそ
俺が…
急ぎ向かった先に見えたのは、開け放たれた襖の前に一人立つ一ノ助の姿だった。
あの部屋の中には、ひいろが…
異変を感じ、一瞬にして殺気だった俺や家康を制するように一ノ助が手をあげる。反対側から慌て来た者たちも同じように制すと、一ノ助はその手を口元に近づけ人差し指を一本立て、軽く結んだ自分の唇へと押し当てた。
指示を受け皆が静かに動きを止めると、一ノ助は部屋の中へと視線を投げた。何かを確認したのか小さく頷くと、こちらを向き小さく手まねきをした。
鯉口を切ったまま、俺と家康は一ノ助の側へと静かに歩み寄る。