第7章 近づく ~淡きひかり~
「なぐさめて欲しいのか?」
「だめ……ですか?」
早る鼓動を知られたくなくて、ひいろの身体を離し、繋いでいた手も離す。
余裕のあるふりをして、鼓動を整えるため少し間を置く。
不安そうに、甘えるような眼でひいろが俺を見る。
身体の前で軽く両手を開く。
悟られないよう、一度深呼吸をし、呟く。
「おいで」
泣いたような微笑むような顔で、ひいろが胸の中に飛び込んでくる。背中に両手をまわし、ひいろの身体をしっかりと包み込み、首筋に顔を寄せる。
家康ではなく、俺を求めているひいろのぬくもりが、身体の熱を上げ、甘すぎない花のようなひいろの香りが鼻先をくすぐる。
「いい子だな」
そう、耳元でささやくと、ひいろの頬がほんのりと色付き、微かに震えた。そして、俺の背中にまわされたひいろの手に力が入る。
「もっと、ぎゅってして下さい」
「あぁ」
もう一度抱き寄せ、背中をぽんぽんと軽くたたいてみる。ひいろの身体から力が抜け、安心したように俺に身をまかせる。