第7章 近づく ~淡きひかり~
俺の迷いが見えるのか、ひいろの眼に強さが戻ってくる。
「光秀様も、ことね様に恋をされているのですか?」
「なぜそう思う?」
「ことね様を見る目が優しかったから……」
「どうだろうな」
何となくはぐらかす。
何時もは得意なそれが、自分の口から出ているはずなのに、ぎこちなく聞こえてくる。
「殿方は、ことね様のような、華やかで綺麗で、真っ直ぐな方が好きなんでしょうね」
「どうだろうな」
「きっと、そうです。光秀様も、家康様も……」
「どうだろうな」
「光秀様!!」
少し怒ったように、俺の頬に添えていたひいろの手に力が入る。
「ならば、そうだと言ったらどうするのだ」
「どうにもしません」
そう言いながらも、ひいろの眼には悲しげな色が浮かぶ。頬に添えていた手をおろし、俺の胸の心の臓の辺にそっと触れる。
「ただ、恋をしていないのでしたら……」
「どうした?」
「少し…甘えてもいいですか?」
胸に触れているひいろの手が、軽く着物を掴む。心の臓も一緒に掴まれた気がして、一瞬息をのむ。
ひいろと眼があう。濡れたような女の眼と。
掴まれた辺りが熱を持ち、どうしようもないざわめきが、身体の中を駆け巡る。