第7章 近づく ~淡きひかり~
思うことは自由……そう、思うことは……
いつかの俺のように……
ことねの顔が、脳裏に浮かんでは消える。
胸に抱くひいろの温もりが、香りが、俺を捕らえにくる。こっちの方が甘いとでも言うように、誘うように誘われるように、ゆらゆらと。
ゆらゆらと揺れ動いているのは俺だけなのだろうか
記憶の中のことね香りとひいろのそれが混じりあい、俺の中をかき乱す。何に焦れているのか、分からない若造のように。
……そう、まだ若くて青い……家康のように
急に思考の中に家康が表れる。ことねに見せる甘い顔、俺とひいろがいる時に見せる不機嫌さ。
ゆらゆらと揺れているのは俺だけではないな。あいつはまだ、気が付いていないのだろう。そう思うと、不思議と余裕がうまれてきた。
腕の中のひいろを見る。
今、腕の中にいるのは、ひいろ。
家康を想い、心を乱し、俺の腕の中に包まれている女。俺ではない男を想い、俺の心を乱す女。
俺はひいろの何を見て、何を欲しているのか…俺は何をしてやれるのか……