第7章 近づく ~淡きひかり~
手を繋いだまま、ひいろと向かい合う。
ふらりとひいろが俺に近づき、俯いたまま額を俺の胸に寄せる。朝顔の簪が揺れ、白いうなじが眼に入り、匂いたつような色香が、俺を誘う。
「……光秀様」
「なんだ?」
俺の胸の中で、俯いたまま呟くようにひいろが喋る。
「すぐに怪我をする子がいると、家康様が話されたことがあります。軟膏をお作りになりながら……」
「あぁ」
「とても…優しいお顔で…作られていました…」
「そうか」
「ことね様のためなんですね」
「あぁ、あいつはすぐ転がるからな」
一瞬、ひいろの手に力がこもる。
「家康様は、ことね様のことが……」
「……家康の心の内までは分からん。だが、ことねは御館様の持ち物で、気に入りだ。だから皆が世話を焼く」
「それだけでしょうか?」
「……分からん」
「心で思うことは……自由ですものね……」
「………自由だな」
見上げるようにひいろが顔をあげる。俺が映る瞳は濡れ、今にも溢れ落ちそうだった。とても悲しげなのに、煽られている気がして、ゆっくりと繋いでいない手をひいろの背中に這わせ、抱き寄せる。ひいろは、静かに俺の腕の中に抱かれた。