第6章 近づく
「家康……もう手、離してもいいかなぁ?」
ひいろの視線を感じたのか、ことねが繋がれている手を上にあげ、訴えるように家康を見る。
「だめ。すぐ転ぶし、迷子になったらめんどうだから」
「子供じゃないんだから大丈夫だよ!!」
「子供と一緒」
頬を膨らまし横を向いたことねのその頬を、家康が指で軽く弾く。その眼差しは、ひどく優しいものだった。
そんな二人を見て静かに微笑みながら、ひいろが俺の袖をまたゆっくりと握る。そして、その指先にゆっくりと力がこもる。
「ことね、存分に世話を焼いてもらえ。お前に何かあれば、仕置きを受けるのは家康だ」
そう言いながら俺はひいろの肩から手を離し、袖を握っていた手を取り、ことねがしたように軽く上にあげる。