第6章 近づく
「俺はいろは屋に仕置きされぬよう、ひいろの世話でも焼いてやろう」
驚いた顔でひいろが俺を見る。そして、察したように家康とことねに簡単に別れの挨拶をする。
それを受け、家康が何かひいろに言おうとしてやめ、代わりに俺に言う。
「光秀さん…ひいろのことお願いします」
「ほぉぅ、お前にお願いされるとはな。」
一瞬、家康の眼が鋭くなる。見つめ返すと、すぐに視線をずらした。
ことねは笑顔で別れの挨拶に応じる。
それが済むと、俺はひいろの手を引き足早に二人の前から去った。背中に刺さる家康の視線を感じながら。
早くひいろを二人の前から遠ざけたかった。二人の繋いだ手が眼に入らない所に。