第4章 おもい~その2~
にやにや嬉しそうに笑うことねの頬を、片手で摘まむ。
「いひゃいっ、みちゅひぃへひゃん」
「随分と面白い顔をしてたんでな」
「ごめぇ……にゃひゃいっ」
頬から手を離してやると、ことねは少し拗ねたように自分の頬をさする。
「もうっ!そんな面白い顔じゃありません! 光秀さんの素の部分が少しでも見れたのかと思って、嬉しかったんです。」
「俺の素の部分……?」
「そうですよ。いつも自分の本当の気持ちを隠してるように見えるから……苦しくないのかなって、心配してるんです。だから、自然に笑ってる姿を見ると、私も嬉しいんです」
「私も?」
頷きながら、ことねは俺に絵を渡すよう促す。そして、絵を受けとると、嬉しそうにそれを見つめる。
「この絵を描いたひいろさんも、きっと同じ気持ちだと思うんです。光秀さんの優しさを知っているから、こんなに素敵な絵が描けるんだと思うんです」
「………なぜ、そうなる」
「ふふふっ、そんなこと言ってもだめです。光秀さんは優しいんです」
ふにゃふにゃした笑顔を浮かべ、絵と使いで持って来た文を俺に渡すと、すぐに離れて立ち上がる。
「今度は捕まりませんよ」
機嫌良さそうに言いながらことねは、眩しい笑顔を残して帰って行った。