第4章 おもい~その2~
番頭の訪問から数日が過ぎていた。
部屋で一人、ひいろが描いた絵を取り出して、なんとなく眺めてみる。
柔らかく微笑む自分の顔………
本当に、こんな顔をしているのだろうか?
優しい心?
そんなもの俺の内にあるのだろうか?
ひいろを抱く?
そこに何があるのか?
ひいろの想いは、家康に。
俺の想いは………
「光秀さん!」
気が付くと、開いた襖の向こうから、名前を呼ぶことねがいた。
「何度か声を掛けたんですよ」
「悪かったな」
大丈夫ですよと言いながら頬笑み、中に入ってくる。
「珍しいですね、光秀さんが考え事なんて」
ことねは、俺が持っているものが絵だと分かると、覗き込んできた。
「素敵……ひいろさんの絵ですか?」
「そうだ、ひいろの絵だ。……こんな顔した俺が素敵か?」
「えっ?」
きょとんとした顔でことねが俺を見る。
「優しそうな頬笑み、時々光秀さんしてますよね」
ことねの言葉に今度は俺がきょとんとする。
「秀吉さんが三成くんのお世話してるのを見たり、政宗の料理に家康が辛いのかけすぎて、言い合いしてるの見たりする時に」
「…………………」
「あと、私に意地悪した後とかに、一瞬だけこういう顔してますよ。……無意識でした?」
ことねが何だか嬉しそうに、俺の顔を覗き込む。