第4章 おもい~その2~
一人になり、俺は大きく溜め息をつく。
どいつもこいつも、俺を優しいなどと……
初めて言われたことが、こうも続くと調子が狂う。
そのまま畳の上に寝転がり、天井を仰ぐ。
ことねの香りが残っているようで、鼻をくすぐる。甘い花のような香り。ことねの笑顔によく似合う。
ことね思えば、心があたたまる。
例え御館様のものだとしても、俺が心でどう思うかは、俺の自由……ただこれ以上踏み込まなければいいだけ……。
ふと顔を動かせば、ひいろの絵が視界に入る。
ひいろを思えば、胸が騒ぐ。あの眼を思い出す。
番頭のせいだろ……。
ひいろとの時間は、心地よいものになっていたのに。
あんな言葉位で、俺が乱されるとはな……
自分の事を嘲笑うように口元に冷笑を浮かべ、両の手で顔を覆う。
最近の俺はどうかしている。自分の思いの中に乱れが出るなど、いつ以来なのか……。
青臭い若造でもあるまいし、女のこと位でここまで落ち着かなくなるとは、正直驚いている。違うな、呆れているのだろう。
次にひいろに会う時、俺はどんな顔をしてるのだろう………