第4章 おもい~その2~
「はい。でもそれは、また別の話でございます」
そう言うと番頭は、長くなりましたと呟き腰を上げる。
「そうそう、光秀様。うちのお嬢様は護身術も小太刀もなかなかの腕前です。お気をつけ下さい。私が大事に育てましたから……。それと、必ず絵師ではなく、素のひいろ様を愛でてあげて下さいませ。」
「俺は抱くとは言ってないが」
「そうでしたね」
「………それにあれは、護身術ではなく、もっと実戦的に見えたがな」
花街でのひいろの姿を思い出し、眉をひそめる俺に、番頭は何も答えず、口角を微かに上げて見せる。
そして、一礼すると廊下に出て膝をおる。そのまま帰りの挨拶を簡単に済ませ、去ろうとする姿に、俺は問う。
「番頭、名はなんと言う」
「今の名は、一之助でございます。」
そう言うと、番頭は眼鏡を直し、深い笑みを残して帰って行った。
1枚の絵を残して………