第4章 おもい~その2~
「そのようなことは、申しておりませぬ。お嬢様は『想い』のある方に愛でられなければ、意味はありませんから」
「『想い』だと……」
「はい。私は光秀様とお嬢様の間に、ある『思い』を感じております。お二人とも、見ないようにされてるのかと……」
番頭はそういうと、頭を下げ、額を畳にすり付けた。
「お願いです、光秀様。お嬢様のこと、お聞き届け下さい」
俺は、先程からあった胸の苛立ちの原因が、少し分かった気がした。
分かったとして、俺は、どうするのか……。
「ならば、尚更に家康に頼め」
なぜだか分からぬ苛立ちが、俺の中で膨らんでくる。そんな俺に頭を下げたまま、番頭が口を開く。
「私共の稼業は、色々と噂の立ちやすいものです。お嬢様は女絵師として、なおのこと…。自分は明るい場所に留まれるものではないと思い込んでいるのです。ですから、光である家康様の側にいるのは相応しくないと……」
番頭は、深いため息をつき、そのままの姿勢で額を畳につけ続ける。