第3章 想い 【*R18表記あり注意*】
試すように俺を見ながら女が言う。
「あの…娘の背中には……刀傷が…あるんですよ」
「刀傷……随分物騒な話だな」
俺が怪訝そうな顔でもしたのだろう、女が動くのをやめて耳もとに口を寄せ囁く。
「旦那……普通の娘とは、違うんですよ…刀傷なんて…」
「…………」
「あの娘を抱いた男が言ってたから、間違いないですよ」
『抱いた男』の部分だけは、はっきりと俺に届くように、強めの口調で耳に流し込む。
「その話をした後しばらくして、その男の姿……誰も見てないんですよ……どうしたんでしょうね……」
そう言うと女は、含み笑いをしなが身体を起こし、見下ろすように俺を見る。
「だから……駄目ですよぅ。女絵師になんて優しくしたら……」
甘えたような声を出しなから、『あの娘に関われば、消されてしまう』と、遠回しに言っているようだった。
「戯れ言だな」
俺はそう言い、女を見る。
「その眼……射ぬくような冷たい眼…。睨んでも駄目ですよ」
女の手が俺の頬を撫でる。
「ぞくぞくする、その眼。好きですよぅ……」
堪らないというように、女は俺の眼を見つめながら、また腰を動かしはじめる。