第3章 想い 【*R18表記あり注意*】
胸の奥で黒いものが、ふつふつとわき上がり、心の中で舌打ちをする。
それが誰に向けてのものなのか…………
女へ向けたものなのか
ひいろを抱いた男へなのか
抱いた女のことを話す馬鹿な男へなのか
馬鹿な男に抱かれたひいろへなのか
ひいろが番頭に見せる笑顔へなのか
ひいろが見せる家康への想いへなのか
ひいろが……………
眼を閉じて浮かぶのは、家康を想い、微笑むひいろの顔。
黒いものが、また ごぷりとわき上がる。
…………俺自身へのものなのか…………
「ねぇ……旦那……」
女の声に引き戻され、眼を開け女を見る。
一人で動くだけでは足りなくなってきたのだろう。誘うように、ねだるように俺を呼ぶ。
「どうした、お前が誘ったんだ。もっと俺を楽しませろ」
俺からは動きもせず、触りもせず、ただ繋がっているだけの女を見る。女からの香りを打ち消すように、転がっている杯を取り、酒を注ぎ口に運ぶ。
この女の言うことなど、本当かどうかも分からないのに、ただ心が乱れていた。
ふと、思い出すことねの香り………
甘い花のような香り……
あたたかい、ひなたにいるような感覚………
帰らなくてはな………
ことねの笑顔が俺を明るい世界へ引き戻す。帰る場所があることを思い出させる。
杯の酒を飲み干すと、繋がったまま女をゆっくりと畳へ押し倒す。女は、やっと与えられるであろう快楽を思ってか、俺の首に手を回し嬉しそうに笑っていた。
「俺を煽ったこと、後悔するなよ」
女の乳房へ痕が残らぬよう歯をたて、動き出す。狂ったように声をあげる女が動かなくなる頃、俺は明るい場所へ帰るため、黒い欲を女の中へと出しきった。