第3章 想い 【*R18表記あり注意*】
その後、二人は俺にもう一度礼を言い、俺はひいろと次に会う約束をした。
うそのように落ち着いたひいろは、これから会う家康の事を思ってか、口元の笑みを絶やさず俺に別れの挨拶をして、帰って行った。
俺の中の首をもたげた思いが、ふつふつと音を立て胸の奥に広がるのも知らずに。
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「おかえりなさい」
部屋に戻ると、にやりと笑い女が出迎える。
「前に絡まれた時は、大の男が二人伸びてましたよ」
俺に酒を進めなから、女は続ける。
「あの娘は、時々面白いんですよ。あたし達の代わりに嫌な男をやっつけてくれるみたいで。みんなそれを見て、すーっとするんですよ」
「嫌な男か……」
「あらあら、いやですよぅ、旦那は別ですから」
甘えるように女が俺にしなだれかかる。
刻みたばこと白粉の匂いがまとわりついてくる。
「ねぇ、旦那。あの女絵師さんとはお知り合い?」
「なぜだ?」
「あの娘を見ている旦那の眼が、優しそうだったから」
「…………………」
「何だか妬けちゃいましたよ」
そう言いなが、女は俺の手から杯を取りあげ、空いた俺の手をとると、自分の胸元へと導く。なま暖かく柔らかい感触が俺の手に伝わる。