第3章 想い 【*R18表記あり注意*】
「旦那、あの娘なら大丈夫ですよ。」
俺が窓辺を離れ、部屋を出ようとすると、女がそう言ってにやりと口元だけで笑った。俺は構わず部屋を出る。下へ降りると、下にいた女達も面白そうに通りを見ていた。見世の若い衆が俺に気づき、何か言おうとするのを眼で制し、通りへと出る。
すぐに、ひいろと男の姿が眼に入る。
にたにたと下品な笑いを浮かべる男に、腕を捕まれたまま、ひいろは冷たい眼で睨み付けていた。
一瞬、ひいろの眼が細くなり間合いつめるような動きをみせる。男に捕まれていない右手の感覚を確かめるように、指を動かし力を入れる。
何か仕掛ける気か?
ひいろの手が動いた瞬間、俺の身体も動く。ひいろの指が男の眼を突く寸前に、俺の手で受け止め、男との間に入る。
目潰しか……面白いことをする……
男は驚いた顔で、ひいろを掴んでいた手を離す。俺はひいろを抱き寄せ、男を見る。
「俺の連れに何かようか。」
「……ひっ……男連れかよ……。」
少し酔いが覚めたのか、怯えたようにひきつった顔をして男は離れていった。