第3章 想い 【*R18表記あり注意*】
「ふふふっ。今日は化粧なんかしてるから、目立つんだねぇ。」
女は、面白い見世物がはじまったとでも言うように、通りを覗きこんだ。
俺は杯の酒を呑み干すと、女の隣に行き外を見る。隣に来た俺を、珍しいものでも見るように、下から見上げて女が言う。
「かわいそうに、悪いのが絡んでるよ。」
口ではそういいながらも、女の眼は笑っていた。
見ると、ひいろがいた。いつもように、地味な着物と帯を締めているが、そこだけ華のような艶やかさがあった。普段はしない化粧のせいか。女は化けるというが、ひいろは正にそれだ。それほど濃い化粧でもないのなに、がらりと雰囲気が変わる。
手には、いつも筆や紙などを入れている包みを持っている。この界隈に仕事に来ているのだろう。ここの女も屋号と絵師であることを知っていた。
ひいろは、男に絡まれていた。酔っ払った浪人に、相手をしろと、しつこく言い寄られているようだ。
嫌そうな顔をして、ひいろが離れようとした時、男がひいろの腕をつかみ強引に引き寄せようとする。
がしゃーーーーん!!
ひいろの包みが地面に落ちる。絵皿が割れたのだろう、派手な音がした。
ひいろは強い眼で男を睨むが、男は気にせずになおもひいろを引き寄せようとする。